着付け練習の夕暮れ 本試験を控える新人納棺師の姿に学ぶこと

こんにちは。政宗です。
先日、ブログでご紹介した新人納棺師のOさんにお願いして、夕方の練習風景を見学させてもらいました。
当日はあいにくの雨模様。梅雨の影響で空もどんよりと薄暗く、時刻は夕方。Oさんはすでに3件の訪問先をこなしたあとでしたが、「大丈夫ですよ」と快く迎えてくれました。
実は今回の練習、ご遺体役を務めてくれたのは、弊社の搬送部門の若手ドライバーさん。搬送部門とは、病院からご自宅や葬儀式場などへご遺体をお運びする役割を担うスタッフのことです。こちらの仕事も、今後ブログでご紹介していきたいと思っています。
さて、今回は「神式(しんしき)」の着付け練習とのこと。
神式とは、仏式とは異なり神道の形式でお見送りを行う宗教儀式のスタイルで、仏式納棺時の旅支度(たびじたく)とはまた考え方が異なります。この日はそのための「神衣(しんい)」という白装束の着せ方を練習する場面でした。
まずは、ご遺体が横になっている事が前提なのでお布団の準備をします。
ご遺体役の方に横になってもらい、Oさんは静かに手を合わせ、一礼してから作業を始めていました。「練習でも、実際と同じように心を込めて接したいんです」と後に語っていた彼の姿勢が、この所作からも伝わってきます。
そして着付けの開始。ご遺体の肌が見えないよう配慮しながら、丁寧かつ手早く神衣を着せていきます。ときには体を少し起こす場面もあり、その一連の流れは驚くほどスムーズでした。
寝たままの方に、ここまできれいに、着物を着せられるなんて…正直、想像以上の技術です。
作業中は集中しているため声はかけませんでしたが、終わったあとに「どんなことに気をつけているの?」と尋ねると、
「肩回りが窮屈にならないようにとか、襟や袖がまっすぐかどうか、そういう細かい部分を気にしています」と教えてくれました。
正直、見ている限り十分すぎるほど丁寧で立派な仕上がりだと感じましたが、ご本人はまだまだだと話していました。
「ベテラン納棺師はもっと手早く、力加減にも無駄がないんです」と少し悔しそうに、でも尊敬の気持ちを込めて話していたのが印象的です。
ちなみに、ご遺体役を務めてくれたドライバーさんにベテランの方との違いは感じるか聞いてみたところ、「全然違いますよ」と即答。
「力のかけ方や身体を起こす動作が、やっぱりベテランの方は絶妙なんですよ」とのこと。
そんな風に、本人はまだまだだと言いながらも、着実に技術を積み重ねているOさん。来月には本試験も控えており、毎日時間を見つけては練習に取り組んでいます。
現場から戻ってきた後の疲れている時間帯に、黙々と練習を続ける姿を見ていると、本当にこの仕事に真摯に向き合っているのだなと胸を打たれます。
本試験の様子も、またブログでお届けする予定です。
この地道な努力が、きっと大きな自信につながると信じて、陰ながら全力で応援しています。
政宗