若手納棺師、本試験直前の奮闘記|先輩の指摘に向き合うまっすぐな眼差し

先日、再び若手納棺師Oさんの本試験に向けた練習に立ち会ってきました。
この日は連日の猛暑日。照りつける陽射しに体力を奪われる中、Oさんは3件の訪問先を終えた後の夕方から練習をスタート。疲れた様子はまったく見せず、むしろ涼しい顔で準備に取りかかる姿に「これが若さ…」とちょっと羨ましくなりました(笑)。
今回の練習は、いよいよ本試験の内容に即した形式。
実際のご自宅での納棺を想定して、祭壇や焼香台のセッティング、玄関先からのあいさつ、ご遺族役へのお声がけまで、本番さながらに進行します。
前回は神道形式の「神式(しんしき)」でしたが、今回は仏教の教えに基づいた「仏式(ぶっしき)」での着付け。
仙台では仏式が最も一般的とされており、多くのご葬儀で行われています。
本試験と同様の流れでの練習
Oさんは、ご遺族へのあいさつからスタート。
納棺前にご遺族様へのご案内や確認事項、故人様へ手を合わせること、硬直した手足をほぐすなど前準備には、やるべきことが実に多岐にわたります。
脱衣では、ご遺体の肌が不用意に露出しないよう注意しながら丁寧に進めていきます。
脱衣の工程では肩、右腕に始まり故人様の起こし方や戻し方お別れのご案内までが含まれます、その後の清拭(せいしき/ご遺体を清める作業)は繊細な気配りや丁寧さが必要です。
着付けは“技術と心”が問われる工程
今回のメインは仏衣(ぶつい/仏式で着せる白装束)の着付け練習です。
着物のように見えますが、仏衣は通常と違い「左前」に着せるのが特徴。これは“逆さ事(さかさごと)”といって、葬儀のさまざまな場面で見られ故人様があの世とこの世との区別し易く、迷わないようにするためとも言われます。
一連の動きは順序良く、非常にスムーズに進行しているように見えます。
ご遺族の視点からどう見えるかを常に意識しながら、襟元や袖口の細部まで丁寧に整える姿がとても印象的でした。
その後は、旅支度(たびじたく)へ。
足袋や手甲(てっこう)、脚絆(きゃはん)などを身につけて、「旅立ちの装い」を整える工程です。ここでは、ご遺族に実際にお手伝いしていただくことで、最後の触れ合いの時間を持っていただけます。ここで六文銭の意味や由来を説明します。
メイクの工程では、髭剃り・洗髪・整髪を行い、ご遺族から生前の様子を伺いながら、できるだけ生前の故人様らしいお顔立ちに仕上げていきます。
厳しい指摘も成長の糧に
最後は、ご遺体役の方をご遺族のご協力のもと丁寧に棺へ納め、棺の取り扱いなどを説明し蓋を閉じて終了です。
素人目にはとても丁寧で、段取りにも不備があったようには見えませんでしたが、先輩納棺師からのフィードバックはかなり厳しいものでした。
「身だしなみが整っているかご自宅に入る前に確認してから入ったのか」「腰が引けたように見え、うつむき加減に見えてしまう」「声が小さく聞き取れない事があった」など…。
でもそれらを受け止めるOさんの目は、驚くほど真剣で、まっすぐでした。「もっと良くなりたい」という気持ちがしっかり伝わってきます。
本試験はもうすぐ
残りわずかな時間、現場の合間を縫って限られた時間の中練習に励むOさん。
この姿を見ていると、ぜひ合格してもらいたいという気持ちが自然と湧いてきます。
次回のブログでは、いよいよ本試験当日の模様をお届け予定です。
Oさんの努力が実を結ぶよう、心から応援しています。
政宗