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処置搬送の現場を体験 ― 搬送スタッフの役割と想い - 株式会社センティスト

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処置搬送の現場を体験 ― 搬送スタッフの役割と想い


こんにちは、政宗です。

本来なら、皆さまにお伝えしようと思っていたのは若手納棺師Oさんの最終試験の模様でした。
しかし、試験の日程がまだ決まらず、実施が少し先になりそうです。

せっかく現場の空気をお届けしようと準備していたところでしたので、今回は視点を変えて、搬送業務について書きたいと思います。
私自身も最近になって搬送業務に立ち会い、「運ぶ仕事」というシンプルな印象が大きく覆されました。
現場で見たもの、感じたことをそのままに綴ります。


「処置搬送」とは?

亡くなられた方をお迎えにあがり、整えるケアまでを担う搬送のことを業界では“処置搬送”と呼びます。

かつては病院の看護師さんがエンゼルケア(死後処置)を担当するのが一般的でしたが、近年は人手不足や病院方針の変化により、搬送スタッフが担うことが増えています。

処置では、

  • 体液の流出を防ぐ処置

  • 生前着ていた病院着から寝間着への着替え

  • 開いた目や口を閉じる処置

  • やつれたお顔周りをふっくらと整える処置

  • 血色を補うためのメイク

といった細やかな作業を行い、安らかな姿に整えます。

このひとつひとつの作業が、後に改めてご遺族さまが故人さまと対面するときの印象を決定づけるといっても過言ではありません。


Sさんの手際の良さと想い

今回同行したのは、以前新人納棺師Oさんの記事でも紹介した若手搬送スタッフのSさん
彼は納棺師を目指して学んでいた経験もあり、処置の手際は驚くほど滑らかです。

「なぜこの処置をするのか」「どうすればより自然に見えるか」

説明を交えながらも手は止まらず、布一枚の扱いまで丁寧。
その姿を見ていると、“作業”ではなく“儀式”を見守っているような気持ちになりました。


搬送は“ただ運ぶ”仕事じゃない

病院から葬儀場への移動。たしかに「亡くなられた方を安置場所へ運ぶ」ことが主な役割ではあります。
しかし、それだけではありません。

ご遺族様にとって、搬送スタッフは葬儀業界の人と初めて接する存在です。
その第一印象は、その後の葬儀全体の印象にもつながります。

ストレッチャーを押す歩幅、声のかけ方、搬送車へ移すときの手つき。
そのひとつひとつが、ご遺族に「安心して任せられる」と感じてもらえるかどうかを決めるのだと、今回強く実感しました。


穏やかな表情とご遺族の言葉

処置を終えた故人さまのお顔は、最初に対面したときよりもはるかに柔らかく、安らかでした。
口元には微笑みが戻ったように見え、「あぁ、こうして見送られる姿が整うのだ」と胸が熱くなりました。

納棺式を前にした段階にもかかわらず、ご遺族からは「きれいにしてくださって、本当にありがとうございます」との言葉が。

間近で処置を見ていた私には、その言葉がSさんの想いをしっかり受け取った証のように感じられ、胸が熱くなりました。

やはり、丁寧な仕事は必ず相手に伝わるのだと改めて実感しました。


搬送の流れ

処置が終わると、病室から廊下を抜け、ストレッチャーにて搬送車へ。
廊下ですれ違う病院スタッフへ小さく会釈をし、静かに道を開けながら進む姿が印象的でした。

葬儀場までの道のりは静寂そのもの。ご遺族が同乗される場合、スタッフは会話を控え、ただ寄り添うように車を進めます。
到着後は、葬儀場へ故人さまを安置。布団を整え、ご遺族を迎える準備が完了してから、深く一礼して搬送業務が終わります。


同行を通して感じたこと

今回の同行を通じて感じたのは、搬送スタッフの仕事もまた「想い」に支えられているということです。

「ご遺体を大切に扱うこと」
「ご遺族の気持ちに寄り添うこと」

この二つの想いが、Sさんの所作のすべてに表れていました。
ほんの数時間の体験でしたが、私自身もその場に立ち会った一人として、ご遺族に安心を届ける責任を共有できた気がします。

管理部にいる私にとって、現場での学びは普段の業務とはまったく違う角度から心に残ります。
今回の経験は、間違いなく今後の財産になると確信しました。

政宗